当院の先端技術

レスキューICSI (rescueICSI)

精子をふりかける体外受精では精子が正常でも受精しない卵が30%程度あり、全ての卵が受精しないことも10%程度の症例におこります。体外受精で受精させる場合は、昼の12時頃に精子をふりかけ、6時間後に卵の様子を観察します。その時にはまだ受精は完了していませんが、受精しそうか(受精兆候がある)、しなさそうかが判ります。受精兆候のない卵はそのまま放置しておいても、そのほとんどが受精しないため、受精兆候のない卵に顕微授精を行なうことで受精しない卵を救済します。当院では受精兆候の判定に紡錘体を観察するため、受精しない卵の正確な判定が行え、受精兆候のない卵が20%以上ある場合に実施しています。また胚の胚盤胞への成長はICSIと同等です。

ピエゾICSI(Piezo ICSI)

従来の顕微受精(ICSI)は先端の鋭利な針を使用して卵の殻を押し破り、細胞膜は細胞質を吸引することにより破るため卵にある程度のストレスがかかります。ピエゾICSIは機械により針へ微細な振動を与えることで、卵の殻と細胞膜を破ります。従来のICSIに較べ受精率が良好になるとされています。当院では開院当初から全ての卵のICSIに採用しています。

針を進めても透明帯は変形しません。

 

紡錘体観察ICSI(Sindle Localization ICSI)

通常の顕微鏡では卵の紡錘体(染色体)を観察することはできませんが、偏光を利用した特殊な顕微鏡で可視化できます。
通常の顕微鏡で成熟していると判断される卵の中には、まだ完全に成熟していない卵も含まれています。それらは紡錘体が形成されておらず、受精させても低受精率になり、発生も良くありません。そこでPolScopeを使用して適切なタイミングで受精させます。また顕微授精の針で紡錘体を損傷することもなくなります。当院ではすべての卵の紡錘体を観察しています。

紡錘体の見えない未熟卵と紡錘体の見える成熟卵

 


救済人為的卵子活性化(rescue artificial oocyte activation: ROA)

顕微受精の4時間後に受精の兆候のない卵子は受精が進行しておらず、そのまま放置しておいても、そのほとんどが受精しませんが、受精兆候のない卵子に人為的卵子活性化を行うことで多くの卵子の受精を進行させることができます。当院では顕微授精の4時間後に受精兆候の見られない卵子が20%以上あるときに、多くの受精卵を得るために救済人為的卵子活性化を行います。


体外受精優先の受精方法

精子をふりかける受精方法の体外受精と顕微受精を比較すると、受精率は顕微授精で高く、胚の成長は同等もしくは体外受精が高いとされています。最初から顕微授精にすると簡単に安定して受精卵が得られるため、顕微授精を行う割合が高い施設が増加し、60%以上の周期で顕微授精が行われています。
しかし、精液所見が正常な患者に顕微授精を選択すると生児を得る確率が高くなることは否定される傾向にあります。
体外受精で受精しない時にレスキューICSIを実施すると受精率は顕微授精と同等になりますが、レスキューICSIを行うには技術と手間がかかります。当院ではレスキューICSIを行う技術を確立し、自然な受精方法の体外受精をできる限り行うようにしており、60%の周期に体外受精を実施しています。